京都の洛中洛外(市中・市外)での祭礼、遊楽、生業(仕事)などの様子を描いた極彩色の屏風(びょうぶ)です。右側は桜の春の季節で、大仏殿や清水寺へのお参りの様子、祇園(ぎおん)社あたりでの花見の場面などが描かれています。一方、左側は紅葉の秋の季節で、洛中の街並みやそこで生活する人々の様子が描かれています。 この屏風は江戸時代に夷(えびす)の廻船問屋本間儀左衛門が京都で手に入れた(18世紀後半)ものを、後に菩提寺の妙法寺に奉納したと伝えられています。
指定:県
種別:有形文化財(絵画)
員数:1双
時代:江戸時代前期
所有者・管理者:妙法寺
指定年月日:平成5年3月30日
詳しい解説
金地に金雲を併せ用い、その間に洛中・洛外で繰りひろげられる祭礼、遊楽、生業などのさまを描いた極彩色の屏風である。雲形をはじめ、五弁桜花や亀甲のなかに四弁の花といった類の文様を、置き上げ文として施す豪華で華やかな金雲には、工芸意匠的な興趣が強く示されており、この画家の絵画に対する姿勢を窺わせる。 六曲一雙の屏風の右隻には、鴨川を図の向かって右下方から対角線状に斜めに横切るように長く配し、その上辺に、洛外にあたる東山あたりの景観を大きく捉える。図中に満開の桜花を散在させたこの隻の主要モチーフは、春である。 一方、左隻では、図の向かって右第一扇から第三扇にかけて、北野社、経堂、 二条城などを描くが、その下辺に、通常、右隻に配されることの多い内裏を比較的大きく捉えている。続く四扇より左方向には、壬生寺、東寺、西本願寺などの伽藍を表し、さらにその上部に紅葉する美しい山並みを連ね、遠く愛宕山や高尾の神護寺も見える。右隻の春に対し秋が設定されている。 また、左隻には、 「天下一」 「対馬守」の字を染め抜いた櫓幕をめぐらす、北野社頭の歌舞伎芝居小屋が描かれており、この図の時代設定を考える上で、格好の拠り所となる。すなわち、この舞台で演じられているのは、慶長8年のころからもてはやされてきた阿国歌舞伎の「茶屋遊び」の場面であり、 「天下一」は阿国の称号、 「対馬守」はその受領名を示している。 さらに、慶長12年に豊臣秀頼によって改修された北野社や慶長11年に完成した東寺の塔が見え、右隻に表された大仏殿は、慶長7年に焼失する以前の秀吉建立の建物を描いている。同様に左隻中央の辺りに立ち並ぶ街屋に目を移せば、「大吉」の暖簾を下げる足袋屋があり、衣屋、はさみ箱屋、扇屋、せともの屋、塗師などとともにその店前に「元和7年正月吉日」の年紀のある大福帳を掛けた両替屋を見出すことが出来よう。 いま、これらの諸景物に依拠して、この屏風の製作年代を推定すれば、おそらく1620年代ないし、少なくとも1630年ころの制作と考えられる。 いずれにせよ、本図は、県内に類品も少なく、制作年代の推定可能な、この時期の確実な作品としてまことに貴重である。本屏風は、夷の廻船問屋、本間儀左衛門が京都で買い求め、菩提寺の日蓮宗妙法寺に奉納したものと伝わる。その功として、儀左衛門は、寛保3年(1743)身延山久遠寺日潮上人から親筆曼荼羅を授けられたと伝えており、奉納の時期もその頃と推察される。
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