I 学習プログラム開発の意義と学習課題
1 学習プログラム開発の意義

 すべての人がいつでも、どこでも楽しみながらかつ容易に学べるための学習環境や援助体制の整備は、生涯学習推進関係者の課題となっている。当県においても、平成5年3月に『新潟県生涯学習推進プラン』(以下、「推進プラン」という)を策定し、県民の生涯にわたる学習二一ズに柔軟に対応し、それぞれの自己実現を図るため、「いつでも、どこでも、だれもが学べる」生涯学習社会の形成を理念とする総合施策を提言している。
 その中でも、講座や教室などの学習機会の提供については直接県民の学習活動にかかわっており、学習機会の提供の充実は県民の学習二一ズヘの対応とともに、学習活動の活性化にも大きく影響すると考えられる。
 推進プランの中でも、学習機会の提供の充実を重視しており、生涯学習関係機関の役割について次のように提言している。例えば、市町村の役割としては、「各行政部局間の連携・協力を強めつつ、高度化・多様化する地城住民の学習二一ズに応える学習機会の提供」、高等教育機関の役割としては、「保有する教育機能を社会や地域に広げる公開講座の充実、出前講座の開設による広く高度な内容の学習機会の提供」、また、県の役割としては、「現代的課題に関する広域的・先導的講座の提供等と学習プログラムの開発」についてそれぞれ提言している。要するに、県、市町村、大学、専門学校、高等教育機関、民間がそれぞれの特性を生かしながら、県民の学習二一ズに対応した学習機会を提供し、県民の学習活動の支援に努めるとともに、相互に連携協力をすることの必要性を述べている。
 近年の社会情勢は、情報化、国際化、高齢化、さらには科学技術の高度化などにより急激に変化している。その中で、県民の学習二一ズもますます多様化、専門化、高度化している。こうした人々の二一ズに対応した魅力ある学習プログラムの開発を通じて、学習機
会の提供を充実することが生涯学習関係機関にとって大きな課題となっている。
 なお、ここでは学習プログラムの開発とは、人々の学習要求を的確に把握する中で学習
謀題を明らかにし、その課題解決のための手順や方法、内容を意図的・計画的に具体化することととらえる。

2 学習プログラムとは何か
 生涯学習における「学習プログラム」については、その用語が広範囲に使用されている。
一般的には、「ある学習目的を達成するために用意された一連の計画」といっている。
 具体的には、次のような例があげられる。
@ 生涯学習推進事業計画や社会教育事業計画のように学習援助にかかわる全体計
 画。この場合は中・長期にわたる事業計画をさすことが多い。推進上の課題、施策の
 基本、重点施策、施策の体系、中心となる事業及ぴその年次計画などが記載されて
 いる。
A 教育委員会や公民館などの学習事業の年間計画。ここでは、講座、学級、行事、集会
 諸会議などの事業を月別に一覧表にまとめていることが多い。最近では、生涯学習カレ
 ンダーとして示しているところもある。
B ある講座、学級における具体的な学習計画。個別事業計画または個別事業プログラ
 ムなどともいい、一定の学習目標に基づき学習テーマ、内容、方法などを組み合わせて
 配列してある。主題(テーマ)、学習内容、方法、会場、講師・助言者・指導者、学習日、
 学習時間、回数、経費、学習者(対象者)などで構成されている。
C 学習展開計画。 1回ごとの学習活動について、どのように進められるのか、学習活動
 の流れを予測し、立案したもの。導入、展開、終末の各段階または分刻みごとに予想さ
 れる活動、教材・教具、活動の形態、留意事項などが一覧表に記載されてある。
 ここでは、Bの意味で用いる。しかし、生涯学習はあくまでも学習者が主体となって活動が展開されていくことを踏まえておかねばならない。したがって、学習プログラムを作成する場合には、学習者の意見をできるだけ取り入れるよう立案の過程の中で学習者が参加できるように配慮することが必要である。

3 学習課題〜現代的課題に関する学級・講座の充実を〜
 学習プログラムを開発するには、まず学習者(地域の住民)が求めている学習課題を明らかにするところから始まる。学習課題とは、一般的には知識、技術、態度などを習得、形成するために学習すべき課題といっている。
 生涯学習の場合は、学習課題をより広くとらえている。私たちは生活していく中でさまざまな困難や問題に直面している。その困難や問題を解決しようとし、自らを向上させていこうとして活動を行う中で、自分自身の生活を充実させようとする。その中で、学習が行われることも多い。そして、その学習活動の中で、解決されることを求められているもの、明らかにすることを求められているものが学習課題である。
 前述したように、近年の社会情勢は、情報化、国際化、高齢化、さらには科学技術の高
度化など、急激な変化が進行している。このような社会の変化に主体的に対応し、より豊
かに生きるために求められている学習課題も多くなってきている。
 国の生涯学習審議会でも指摘しているところであるが、社会の変化、ライフスタイルの変
化に伴い、私たちが社会生活を営む上で理解し、体験しておくことが必要な課題が増大し
ている。そのなかで、「社会の急激な変化に対応し、人間性豊かな生活を営むために人々
が学習する必要の課題」を「現代的課題」と呼んでいる。そして、例としては、次の事項をあ
げている。
   生命、健康、人権、豊かな人間性、家庭・家族、消費者問題、地域の連帯、まちづく
   り、交通問題、高齢化社会、男女共同参画型社会、科学技術、情報の活用、知的所
   有権、国際理解、国際貢献・開発援助、人口・食糧、環境、資源・エネルギー等 
 さらに、審議会では、この現代的課題について「自ら学習する意欲と能力を養い、課題
解決に取り組む、主体的な態度を養うこと」の重要性についてもふれている。
 このことについて、当県の推進プランの中でも、「健康、人権、環境、男女共同参画型社
会の形成等の現代的課題についての学級や講座など多様な学習機会の提供を推進す
る」と明言している。
 現代的課題についての学習機会の提供を充実することが今、生涯学習関係機関に求め
られているのである。
 参考文献
(1) 岡本包治、坂本登他著 「生涯学習テキストC 学習プログラムの技法」 実務教育
   出版 1988年4月
(2) 岡本包治編者 「現代生涯学習全集4 生涯学習プログラムの開発〔企画・展開・評
   価〕」ぎょうせい 平成4年10月
(3) 群馬県生涯学習センター 「生涯学習のてぴきV 生涯学習推進のための学習プロ
   グラムづくり」 平成元年3月